英会話スクール辞めてきた

 

2年間続けた英会話スクールを今日辞めてきた

 

2015年12月2日。

忘れもしないあの日。

朝、目覚まし音が鳴っていつものように携帯を止めた。画面には彼氏から

突然ごめん。

と始まるLINEの通知が来ていた----

 

遠距離。

付き合い始めて2年半。当初は大学生だった私も既に社会人。彼は大学院へと進み、半年の留学中だった。

 

正直、初めの一行で全てを悟った。けれど、きっとこれは何かの間違い、悪い夢だろうと思った。

 

 

追い討ち。

人生の七不思議。

悪いことはどうしてこうも重なるのか。

モーニング娘。'15のエース鞘師里保の卒業。

私にとっては私を代弁して表現してくれる神のような存在だ。

突然の発表に心が追いついていなかった。

 

私はこの世から拒絶されてるのか?なぜ今こんな仕打ちをされなければいけないのか。

そんな風に思ったかははっきりとは記憶してないけれど、目に映る景色は灰色で、何もかもが全く意味のないものに思えたのは確かだった。

それでも社会人。働かねばならぬ。寧ろ仕事というものがあったから多少は良かったのかもしれない。

 

ぼんやりとした空間にいるとき、それは例えば

 電車のホーム、ショッピングモールのトイレ。何も考えていないはずなのに勝手に目が潤んで、そのたび意識を取り戻したかのように上を向いて歯をくいしばるのだった。

 

そんな人間を形どった魂のない私を救ったのは英会話スクールだ。

 

超大手英会話スクールに通い始めた。

ネイティブばりのイングリッシュスピーカーになってやろう!なんて最初の一回くらいで、ちょっと話せるようになったらいいなくらいのモチベーションだった。彼を少しは見返したいという気持ちはあったが。まあ相手は優秀過ぎて私など到底及ばない。

 

 マンツーマンのレッスン形式、持ちコマ制、時間や先生は都度自分で選択する方式である。

カレンダー通りの勤務ではない私にとって、決められた曜日・時間に受講するのではなく、自分の都合の良い日時から選択できるのは好条件だった。

 

1レッスンあたり40分うん千円、レッスントータルうん十万円かかるという社会人1年目にしては多額な買い物だが、毎回のフィードバックやその他学習の状況や方法についてカウンセリングしてくれる手厚いサポート、予習復習のオンラインツールなどの事も考えると少々お高いものの、妥当であると思う。

 

私のレッスン内容としては、

おそらく一般的な英会話スクールや

同スクールの一般の受講生とはやや異なるものだっただろう。

だがしかし、

それでいいのだ。

内容は受講生側が全てアレンジを加えていい事になっており、毎回そのレッスンでどんな事をするか決める権利を与えてくれた。

 

さらに言うと先生方は、私が好きなものの話を聞いてくれ、共感してくれ、好きそうなものを教えてくれ、知らないものはGoogleで調べてくれたりした。

それは例えば音楽。

 大学時代サークルでビートルズを演奏していたという話をきっかけに色んな先生から教わった音楽。とある先生はギターとベース合わせて13本持っているような人で、かなりマニアックな情報を教えてくれた。日本では知られてないけどアメリカで活躍してる日本人グループとか、海外のロックだけじゃなくてジャズも知っていて。あとはoasisは復活するかとかそんな話もした。

 

それは例えば旅。

仕事柄しょっちゅう色々な国に行く私は、毎回のようにどこそこに行った話をした。

その場所はこの場所に似てるねなんて言われるとそこにも行ってみたいなと思った。日本人の私が知らない日本の魅力的な場所も沢山教えてもらったように思う。

 

趣味の合う先生や話を聞いてくれる先生の存在はとても大きかった。

テキストの内容も学んではいたけれど、雑談と呼ばれる時間が何よりも楽しかった。

 

 

しばらくして私は英会話スクールのことをこう呼ぶことにした。

 

 

お酒のないホストクラブ

 

 

 

 

そう。気づいてしまったのだ。

私は自分がお金を払って、好きな時間に好きな先生と、好きなもののお話をしている。

 

「自分の英会話力を向上するため」ではなく、

「自分の好きなものを共有するため」にお金を払っていたのである。

 

 

 本当のホストクラブには縁遠く行ったことはないが、その分と言うべきか、英会話ホストクラブには2年もお世話になった。

 

 

そして長々と前置きしてしまったが、

 今日、辞めるために英会話スクールへ足を運んだ。

辞めるに至った理由を話し、書面のサインするだけで呆気なく事を済ませた。

時間にしておよそ10分。

カウンセリング担当の方に挨拶をしてスクールを後にした。

最後の最後にそのカウンセラーと目が合った時、私は目が潤むのを感じた。今までの感謝の気持ちを遮るように涙がこみ上げてくるため、伝えたい事は何も伝えられぬまま足早に去った。

外に出て振り返ると、いつもの変わらぬ校舎の姿があった。

どっしりと構えているのに、優しい。

 

私は堪えきれず涙を流した。

 

2年間、私の心を支えてくれた場所。

 

たくさん話して、たくさん笑って

私にちょっと頑張る勇気をくれた場所。

 

 ありがとう。

 

 

 

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あの彼とは3ヶ月前に復縁して、

来年を目処に結婚することになった。

 

どん底のときに英会話スクールへ通っていなかったらこんな結末じゃあ無かったかもしれない。

 

 

-完-